アーナム・ジンの過去と未来

GASP

●はじめに

どうも、GASPです。

いよいよ、オデッセイブロック最後のエキスパンションである「ジャッジメント」が発売されました。その中には皆さんもご存知のように、かつてのスーパースター、《アーナム・ジン/Erhnam Djinn》が復活を果たしています。およそ5年ぶりに復活したこのカード、昔はどのように活躍したか、そしてこれからのスタンダードに彼の居場所があるのかを見ていきたいと思います。

●アーナム・ジンの過去

まずは、過去に使われた《アーナム・ジン》デッキを紹介しましょう。

赤緑アーナム・バーン/中村聡(1996年日本代表決定戦ファイナリスト)
Main Deck Sideboard
4 エルフの射手/Elvish Archers
4 Spectral Bear
2 疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish
4 アーナム・ジン/Erhnam Djinn
1 ルアゴイフ/Lhurgoyf

4 稲妻/Lightning Bolt
2 火葬/Incinerate
1 火の玉/Fireball
2 Stormbind
3 粉砕/Shatter
1 爆破/Detonate
3 ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk
2 巨大化/Giant Growth
1 黒の万力/Black Vise

5 森/Forest
5 山/Mountain
1 ドワーフ都市の廃墟/Dwarven Ruins
1 ヘイヴンウッドの古戦場/Havenwood Battleground
4 カープルーザンの森/Karplusan Forest
2 Timberline Ridge
4 露天鉱床/Strip Mine
4 ミシュラの工廠/Mishra's Factory
2 疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish
1 Zuran Orb
1 魔力の櫃/Mana Vault
1 Anarchy
1 平穏/Tranquility
1 粉砕/Shatter
1 崩壊/Crumble
1 ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk
2 嵐の運び手/Storm Seeker
2 火葬/Incinerate
2 Serrated Arrows

やはり代表的なのはここでしょう。当時「最強」の座を欲しいままにしていた黒単ネクロディスクデッキを仮想的と見なして作り上げられたのが、この赤緑ステロイドです。《アーナム・ジン》を主力クリーチャーとし、それを赤の火力と《巨大化/Giant Growth》でサポートする戦い方は、今の赤緑ステロイドにも通ずるところがあります。デッキを見てもらえば分かりますが、メインから過剰とも言えるほどの黒対策、アーティファクト対策が盛り込まれています。これは、当時の強豪たちがメタの中心と見ていた、《ネクロポーテンス/Necropotence》をキーカードとした「黒単ネクロディスク」と《冬の宝珠/Winter Orb》《ハルマゲドン/Armageddon》コンボを盛り込んだ「タイムデストラクション」対策のためです。そのため、一般的なステロイドと同一視する事は出来ないですが、この当時から既に赤緑ステロイドというデッキは使われており、十分な強さも持っていました。そして、その強さを支えるクリーチャーが《アーナム・ジン》だったのです。

このデッキの基本的な戦い方は、軽量クリーチャーで殴りつつ、それを火力や《巨大化》でサポート、やがて《アーナム・ジン》や丸々太った《ルアゴイフ》で場を制圧します。当時、《アーナム・ジン》より大きいクリーチャーといえば《マハモティ・ジン/Mahamoti Djinn》か《Ihsan's Shade(HL)》ぐらいしかなかった上、《巨大化》を擁するこのデッキで殴り負けることはほぼありませんでした。

また、2枚入っている《Stormbind(IA)》はいらなくなった手札が全て2点火力になる強力エンチャントで、これによって最後の数点を削りきる事も出来ます。さらに、《ミシュラの工廠》《露天鉱床》という2枚の超強力土地が、青に弱いはずのこのデッキの助けとなっています。ただでさえこの時代はまだ十分な数のカウンターが存在しなかったため、生半可なカウンターデッキでは太刀打ちできなかったでしょう。当時最強と言われた黒単ネクロディスクも、除去は基本的に《ネビニラルの円盤》に頼っていたため、それを壊されるとあとは《アーナム・ジン》に押しつぶされるだけ、という事もあったと思われます。

当時の中村聡氏はこのデッキで96年世界選手権の日本代表決定戦で5勝1分という好成績を残し、見事日本代表に輝きました。さらにこのデッキを改良・調整して望んだ世界選手権においても彼はスタンダード部門(当時はタイプUと呼ばれていました)で5勝1敗という好成績を残しています。

また、ミラージュ、ビジョンズが発売された頃には《ジョルレイルのケンタウルス/Jolrael's Centaur(MI)》《スークアタの槍騎兵/Suq'Ata Lancer(VI)》といった優秀な中堅クリーチャーや《農芸師ギルドの魔道士/Granger Guildmage(MI)》という緑のピンガーといったクリーチャーが追加され、赤緑ステロイドは速攻性と柔軟性をさらに高め、その強さを増していきました。

しかし第5版が発売され、《アーナム・ジン》は多くのプレイヤーに惜しまれながらもその姿をスタンダードから消してしまいました。その後、ポスト《アーナム・ジン》を狙い多くの緑の4マナクリーチャーが現れましたが、《アーナム・ジン》並みの強さを持つクリーチャーはなかなか現れませんでした。

そして《アーナム・ジン》が消えてから5年、遂に《アーナム・ジン》は復活を成し遂げました。

●アーナム・ジンのこれから

現在の環境は5年前とは大きく違います。カウンターデッキは現環境で非常に強力な存在であるし、黒の除去も豊富です。また、クリーチャーに関してもコストパフォーマンスのよい強力なクリーチャーは他にも数多く存在します。ここで無理して《アーナム・ジン》を使う必要も無いかと思われますが、古参のプレイヤーにとっては、何とかしてこの懐かしいクリーチャーを使ってみようという気も起こってきます。そんなわけで、どことなく昔のデッキの匂い漂う赤緑ステロイドを組んでみました。

赤緑アーナム・バーン/GASP
Main Deck Sideboard
4 ラノワールのエルフ/Llanowar Elves
4 野生の雑種犬/Wild Mongrel
4 呪文散らしのケンタウロス/Spellbane Centaur
4 火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu
4 アーナム・ジン/Erhnam Djinn
1 シヴのワーム/Shivan Wurm

4 獣群の呼び声/Call of the Herd
4 炎の稲妻/Firebolt
4 ウルザの激怒/Urza's Rage
2 地震/Earthquake
2 森の力/Sylvan Might

8 森/Forest
4 山/Mountain
4 カープルーザンの森/Karplusan Forest
4 モスファイアの谷/Mossfire Valley
2 蛮族のリング/Barbarian Ring
1 ケルドの死滅都市/Keldon Necropolis
なし

このデッキの基本的な戦い方は従来のステロイドと変わりません。ただし青を意識した軽量クリーチャーによる速攻というよりは、同じクリーチャー戦を意識した構成となっています。

《ラノワールのエルフ》は《アーナム・ジン》を3ターン目に召喚するため、《野生の雑種犬》は今や欠かす事の出来ない最強の「熊」です。《呪文散らしのケンタウロス》は、青系のデッキに使われているバウンス系のカードに対抗するため。《獣群の呼び声》との相性もいいです。その《獣群の呼び声》、バウンスに弱いという欠点はありますが、1枚のカードから2体の3/3クリーチャーを出せるカードが弱いはずがありません。《アーナム・ジン》は言うまでもなくこのデッキの主力。サイカトグデッキに対しての相性は最悪とも言えますが、逆に青緑マッドネスデッキに対しては非常に有効だと思います。現在広く使われている《尊大なワーム/Arrogant Wurm(TO)》を一方的に殺す事ができるからです。《シヴのワーム》もそのサイズで採用されました。《尊大なワーム》はおろか《ワームの咆哮/Roar of the Wurm(OD)》をも上回るサイズを持つこのクリーチャーはクリーチャー戦において決め手となります。トランプルがあるためプロテクションも怖くなく、《火炎舌のカヴー》との相性も最高です。そしてその《火炎舌のカヴー》、このデッキで4マナクリーチャーがこれ以上増えるとマナカーブが非常に危ういのですが、今の環境から、入れないわけにもいかないでしょう。

その他の呪文は火力と《森の力》と、これもクリーチャー戦を意識しています。クリーチャー戦を意識するなら《炎の稲妻》より《ショック/Shock》か《集中砲火/Flame Burst(OD)》といったインスタント火力の方がトリックが使いやすいのですが、今回は再利用できる点を評価して《炎の稲妻》を選択しています。また、《地震》は、通常のステロイドの戦線を崩壊させる事が出来ます。最初は《Stormbind》に代わる《隕石の嵐》も入っていましたが、やはりこのデッキでは回すのは厳しいためメインからは外れています。

見ての通り、このデッキはクリーチャー戦を意識しています。今のメタ・ゲームの環境で言えば赤緑ステロイドと青緑マッドネスを想定していると言えます。

赤緑ステロイドに対しては序盤は互いにクリーチャーを出しては焼かれるといった展開が続くでしょう。そこで《アーナム・ジン》を出せば戦局は大きく傾きます。《シヴのワーム》も、試合を決定付けるクリーチャーとなるでしょう。クリーチャーの展開速度で負けなければ、まず負けることは無いと思います。

青緑マッドネスに対しては、《マーフォークの物あさり/Merfolk Looter》さえ焼ければ楽になります。《野生の雑種犬》がやや厄介ですが、《アーナム・ジン》が出れば問題は無いと思います。《ワームの咆哮》がガンですが、そのために火力と《森の力》があるのです。

この際サイカトグ(《激動/Upheaval(OD)》)デッキをはじめとするパーミッションデッキはすっぱりと切り捨てていますが、その分他のクリーチャーデッキには有利に戦えるのではないでしょうか。欠点はマナ・カーブが上を向いているためカウンターデッキに弱い事と、同じ理由で土地が止まった瞬間、テンポが大きく崩れてしまうという事です。

サイドボードは作っていませんが、やはり苦手としているサイカトグデッキに対する対策が大半を占めるでしょう。《疾風のマングース/Blurred Mongoose(IN)》や《ヤヴィマヤの蛮族/Yavimaya Barbarian(IN)》、《隕石の嵐》といったところでしょうか。また、《崇拝/Worship》や《ゴブリンの塹壕/Goblin Trenches(AP)》といった強力エンチャント対策も外せないと思います。

このデッキ、デッキポテンシャル的にはそれほど高いとは言い難いですが、昔からマジックを遊んでいる方にとっては、どことなく懐かしさの漂うデッキではないでしょうか。

●終わりに

時代は「クリーチャー戦の時代」と言われていますが、かつて主役の座にいた《セラの天使/Sera Angel》《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire(TO)》といった大型クリーチャーはほとんど使われていません。今回復活した《アーナム・ジン》は、今後のスタンダードに一石を投じる事になるのでしょうか。《ブラストダーム/Blastoderm(NE)》のように賞味期限も無い、《翡翠のヒル/Jade Leech(IN)》のように後のテンポを崩さない、4マナ4/5クリーチャーをあなたも使ってみませんか?

そう、《剣を鍬に/Swords to Plowshares》でゲームから取り除かれていた《アーナム・ジン》が、ジャッジメントと数多くのデュエリストの《願い/Wish》によって、今ここに戻ってきたのです。

それでは、拙い上に長い文章ではありましたが、お付き合いいただきありがとうございました。

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