動員せよ!

GASP

はじめに

おひさしぶりです、以前何度か「Peak Magic」にて記事を書かせていただいた GASP というものです。ここ数ヶ月、仕事のためになかなか投稿する機会がなかったのですが、新エキスパンション、ONSLAUGHT の発売に伴い、再びマジックに対するモチベーションが上がってきたので書く事にしました。

今回書くのは、ONSLAUGHT に登場した白のエンチャント、動員令/Mobilizationについてです。かつて Alliance に存在した超強力土地Kjeldoran Outpostに酷似したこのカード。11 月以降のスタンダードにて新たなデッキを生み出すのではないかと思われます。そこで、今回は昔栄華を誇った「カウンターポスト」を振り返りつつ、《動員令》デッキの可能性を探ってみたいと思います。

なお、記事の方向性が九印さんの「ウルザの眼鏡 出張版」に限りなく近いですが、多分実用性に関しては比べるべくもないほど低いと思われますのでご注意を。

「カウンターポスト」の時代

かつて存在した強力なデッキ、「カウンターポスト」。そのデッキのキーカードとなったのが「Alliance」の土地、Kjeldoran Outpostです。このデッキは 1997 年に栄華を誇り、その年の APAC では塚本俊樹氏が準優勝し、その年の日本選手権でも代表4名中3名が「カウンターポスト」でした。それくらい、当時のこのデッキは強力だったのです。昔の「デュエリスト・ジャパン」にも、当時のデッキが紹介されています。資料が少ないためデッキはバージョンの中でもかなり古いタイプのものになってしまいますが、デッキの基本コンセプトは変わっていません。

Counter-Post - Yoshiyuki Tsuruta / 1997 年世界選手権日本代表
Main Deck Sideboard
2 支配魔法/Control Magic
4 対抗呪文/Counterspell
1 臨機応変/Sleight of Mind
4 Force of Will
4 雲散霧消/Dissipate
4 夢での貯え/Dream Cache
2 政略/Political Trickery
2 赤の防御円/Circle of Protection: Red
2 解呪/Disenchant
2 剣を鍬に/Swords to Plowshares
4 神の怒り/Wrath of God

13 島/Island
8 平地/Plains
4 Kjeldoran Outpost
4 Thawing Glaciers
4 青霊破/Blue Elemental Blast
1 臨機応変/Sleight of Mind
2 政略/Political Trickery
2 黒の防御円/Circle of Protection: Black
2 緑の防御円/Circle of Protection: Green
2 解呪/Disenchant
2 破裂の王笏/Disrupting Scepter

このデッキの動きは比較的簡単です。序盤から押し寄せてくるクリーチャーの群れを《剣を鍬に》《神の怒り》といったクリーチャー・コントロールで凌ぎ、危険なスペルはカウンターして、序盤を凌ぎます。やがてKjeldoran Outpostでトークンを生み出せるようになれば、それで相手のクリーチャーをブロックしつつ、トークンを量産していきます。そしてトークンが暴力的な数になれば、一気に相手を叩き潰します。

このデッキには(というか当時のコントロールデッキにはほぼ確実に)Thawing Glaciersが使われており、非常に高い安定性を誇ります。また、時が経ち、第5版、Visions、Weatherlight が発売されると渦まく知識/Brainstorm》《衝動/Impulse》《中断/Abeyance》《ジェラードの知恵/Gerrard's Wisdomといった強力なカードが追加され、ますますこのデッキは強固になっていきました。

Kjeldoran Outpostから生まれるソルジャー・トークンで止めることの出来ないプロテクション(白)クリーチャーを多数持つ黒単ウィニーなどには弱いですが、当時存在した多くのデッキと互角以上に戦えた非常に強力なデッキだったと言えるでしょう。

《動員令》の時代

では時代変わって現代、《動員令》を使ったデッキを組んでみましょう。まずはデッキコンセプトを決めましょう。考えられるのは白ウィニー(青白パニッシャー)、青白対立、パーミッションといったところです。

白ウィニーにおいて、《動員令》は早くても3ターン目にキャスト、起動はその次のターンからになり、速攻デッキには向きません。除去満載デッキに対しては種切れ防止という効果が望めますが、多くは単にテンポを崩すだけになりそうなのでパスします。

青白対立だと青緑対立と違ってマナクリーチャーがいないため立ち上がりがかなり遅いです。また、1個のトークンを生み出すのに3マナも必要なため柔軟な動きが出来なさそうなので、これもパスします。

以上から、結局コンセプトは過去と同じ、パーミッションタイプで行こうと思います。INVASIONブロックが落ちて3色目を足すのが難しくなったため、デッキは青白の2色で組むのが安全だと思われます。

では続いてカードの選定です。まずはこのデッキの要となるカード、《動員令》です。必ず引かなければならないカードなので4枚必須でしょう。個人的にはメインに《動員令》3枚、サイドに1枚入れて黄金の願い/Golden Wishで持ってくるというのも汎用性が増してなかなか面白いと思うのですが、いかんせん《黄金の願い》自体が5マナでソーサリーと殺人的に重いため、現実味はなさそうです。

続いてその他のカードの選定です。このデッキは主に「打ち消し呪文」「ドロー操作」「クリーチャーコントロール」によって構成されています。

まずはカウンターですが、INVASION ブロックがスタンダードから落ちてしまい、吸収/Absorbが失われ、優秀なカウンターが減ってしまっています。《対抗呪文》4枚はいいとして、他に入りそうなカードとしては魔力の乱れ/Force Spike》《記憶の欠落/Memory Lapse》《中略/Syncopate》《堂々巡り/Circular Logic》《紛糾/Complicate》《まごつき/Discombobulateといったところでしょうか。こう見ると、やはり弱体化した感があります。青緑では《対抗呪文》以上の働きをした《堂々巡り》も、このデッキではあまり使えなさそうです。この中では、状況によってはサイクリングでカードが1枚引ける上、カウンターまで出来る《紛糾》が一押しでしょう。《まごつき》は重いですが、ライブラリー操作も出来るしこの環境では数少ない確定カウンターですから1〜2枚は入れてもいいかもしれません。《中略》も悪くはないですが、《魔力消沈/Power Sink》と違ってタップアウトを強要できないところが弱いです。《魔力の乱れ》《記憶の欠落》はどちらも強力ではありませんが状況によっては有用です。軽めのカウンターとして入れておいていいでしょう。

続いてドロー操作ですが、これも INVASION ブロックが落ちたことで強力だった嘘か真か/Fact or Fiction、使い勝手のいい選択/Optが使えなくなりました。ONSLAUGHT でも得たものは少なく、少々厳しいです。使えそうなのは手練/Sleight of Hand》《金言/Words of Wisdom》《強制/Compulsion》《洞察のひらめき/Flash of Insight》《ルーンの解読/Read the Runesあたりでしょうか。しかしこの中で《強制》は直接手札増加には繋がらない上やや重く、《洞察のひらめき》は序盤に打てない、《ルーンの解読》はこのデッキにとってはデメリットが厳しいと、有効なものはさらに絞られます。霊感/Inspiration》《集中/Concentrate》《綿密な分析/Deep Analysis》《好機/Opportunityといったあたりはカードは多数引けますが、重いのが難点です。パーミッションにタップアウトは禁物。このデッキには合いそうにありません。ここは好みで《手練》《金言》の二択でしょうか。《洞察のひらめき》のフラッシュバックも悪くはありません…序盤のライブラリー操作が薄くなりそうですが。

続いてクリーチャーコントロールです。とりあえず《神の怒り》4枚は問答無用で4枚投入は間違いないでしょうが、問題はそこからです。昔のバージョンには強力な単体除去である《剣を鍬に》がありましたが、現在白のクリーチャー除去は使い勝手の悪いものばかりです。復讐/Vengeanceは4マナソーサリーの上タップ状態のクリーチャーしか殺せない、復仇/Reprisalはパワー4以上のクリーチャーに限られます。考え直し/Second Thoughts》《懲罰/Chastiseは重い上、攻撃クリーチャーにしか効きません。唯一、ONSLAUGHT で登場した万能除去(もどき)の奉納/Oblationが使える可能性はありますが、(相手のクリーチャーなどに使うと)カードアドバンテージ的にはマイナスなので実用に耐え得るかどうかは疑問です。そうなると、白は諦めて青のバウンスに頼ることになりますが、排撃/Repulseなき今、霊気の噴出/AEther Burstが妥当でしょう。

それではその他のカードを考えてみましょう。昔使われた《ジェラードの知恵》は最近は見かけませんが、うまく使えば 10 点〜 14 点のライフ回復が見込めます。もっとも、最近は4マナ6/6飛行が闊歩している時代。この程度のライフ回復量がどれほど影響を与えるかは甚だ疑問ではあります。

ユーティリティーカードである《解呪》ですが、長い間メインでは見ていません。強力なエンチャントやアーティファクトが存在しないというのがその理由ですが、ONSLAUGHTにはそれなりに強そうなエンチャントがいくつか存在するので(それこそ《動員令》とか)、投入を考えてもいいかもしれません。

サイドボードに手を伸ばせる狡猾な願い/Cunning Wishも面白いかもしれません。持ってくるカードは冬眠/Hibernation》《枯渇/Mana Short、追加のカウンターなどが挙げられます。もっとも、夜景学院の使い魔/Nightscape Familiar付きサイカトグデッキと違ってコスト軽減はないため、使い易さに関しては首をひねらざるを得ませんが。

それから、現在の環境のクリーチャーは不可思議/Wonderのお陰で1億総飛行状態。こちらの兵士トークンは攻撃時にタップしないとはいえ、飛行クリーチャーを止めることは出来ません。「カウンターポスト」の強みは、飛行やプロテクション(白)を持たないクリーチャーはトークンでブロックできるため、カウンターする必要がないという事です。だから、相手の墓地に《不可思議》が落ちた瞬間、相手のクリーチャーは全てマストカウンターになってしまいます。そのため《不可思議》対策は外せません。考えられるのは、こちらも《不可思議》を入れる事。《強制》などを入れて《不可思議》を墓地に落とす方法があれば、有効かもしれません。他には朝明け/Morningtide》《追憶/Reminisce》《蒸気爪/Steamclawあたりが考えられますが、いずれも直接アドバンテージには繋がらないため、サイドボード要員にしかならないところが厳しいです。

以上の考察を踏まえ、とりあえず「カウンター動員令」の試作版を作ってみました。

Counter-Mobilization Ver.1 / GASP
Main Deck Sideboard
4 対抗呪文/Counterspell
4 紛糾/Complicate
3 魔力の乱れ/Force Spike
2 まごつき/Discombobulate
4 金言/Words of Wisdom
4 神の怒り/Wrath of God
4 動員令/Mobilization
4 霊気の噴出/AEther Burst
2 強制/Compulsion
3 新たな信仰/Renewed Faith

11 島/Island
7 平地/Plains
4 アダーカー荒原/Adarkar Wastes
4 溢れかえる岸辺/Flooded Strand
サイドボードは未定

勝ち手段は《動員令》4枚のみです。計 13 枚のカウンターと8枚のクリーチャー・コントロールで身を守りつつ、《動員令》が回るまで粘る戦い方になるでしょう。結局メインデッキに《不可思議》対策は入らなかったので、サイドボードで何とかするしかありません。《新たな信仰》は、《ジェラードの知恵》に代わるライフ回復カードです。回復量では《ジェラードの知恵》には及びませんが、ライフ回復が無駄になるパーミッション同士の対決などではサイクリングによって無駄カードを抱える心配はありません。

サイドボードは、新スタンダードにどんなデッキが存在するかも分からない状態なので割愛しました。少なくとも《不可思議》対策は外せないでしょう。それ以外は新たな流行デッキを模索しつつ作っていく必要があるでしょう。

さて、とりあえずデッキは出来ましたが、これで現在のスタンダードにはびこる有力デッキと互角以上に戦えるでしょうか? まず、難しいでしょう。こう言ってしまうと身も蓋もないですが、《動員令》でかつての「カウンターポスト」を取り戻そうとするのには無理があります。その最大の要因は、「Kjeldoran Outpostは土地であり、《動員令》はエンチャントであること」です。Kjeldoran Outpostは土地であるため場に出すのにマナはいらず(《平地》が1枚いりますが)、カウンターもされません。それに対し、《動員令》はマナはかかるし、当然カウンターもされます。そして、土地よりもはるかに壊されやすいのです。そのため安全に《動員令》を出そうと思ったら、カウンターできるだけのマナを残さないといけなくなり、場に出した後もトークンを生み出す3マナとは別にカウンター用のマナを残しておくことも必要です。その上かつての「カウンターポスト」には0マナで打てるカウンター、Force of Willがありました。このため、「カウンターポスト」はある程度タップアウトの危険は冒せるし、序盤からKjeldoran Outpostを序盤に出して、ブロッカーを生み出すことも出来ます。それに対し《動員令》は、無防備な状態を避けようと思ったら、カウンター用のマナを残さねばならず、序盤から《動員令》を出してブロッカーを生み出すことは困難です。このように、「カウンターポスト」と《動員令》には、防御力において大きな差があります。これが、「カウンターポスト」と《動員令》の大きな違いなのです。

ここまで言ってしまうと、「なら《動員令》でデッキ組んでも弱いじゃん」という話になってしまいます。…確かこの記事は《動員令》の方向性を探っていくはずだったのですが、話がどんどんマイナスイメージに行ってしまって自分でもびっくりしてます。

とはいえ、あくまでこれは一つの可能性。言ってるのは、私のような何の実績のない者ですので、もしかしたら研究の成果、より完成度の高く強力な《動員令》デッキが誰かの手によって作られるのかもしれないのです。この「カウンター《動員令》」デッキはあくまで過去の「カウンターポスト」を夢見て作ったもの。この時代に合わせた、新たな《動員令》デッキを皆さんの手で作ってみてはいかがでしょうか。

終わりに

書いてるうちに、なんだか話がどんどん違う方向へ行ってしまいましたが、この記事を書いた動機は過去の「カウンターポスト」を懐かしく感じたからなので、読まれた皆さんにも、この懐かしさを感じて頂ければ幸いです。

それでは、拙い上に長い文章でしたが読んでいただき、まことにありがとうございました。

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