リミテッド・脱初心者講座
第5回「10〜11月のリミテッドシーズンを振り返って」

吉川祐輔

めっきり寒くなり、街角にクリスマス・ソングが流れ出す今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

まもなく「シールド+ロチェスタードラフト」で争われてきた 2003 プロツアー・シカゴ予選のシーズンも終わろうとしているわけですが、今回はこのシーズンを振り返って、そこから学べることをまとめ、今後の指針としたいと思います。

勝利と敗北、その差を分けたもの

「そのゲーム(Magic)では、『上級者』と『中級者』が戦った場合、10 回中何回『上級者』が勝つの?」

先日、他の競技ゲームのプロと話をする機会があり、話の流れで Magic について説明することになったのですが、そのとき開口一番浴びせられた質問がこれでした。

非常に難しい質問で、私も返答に窮したのですが、「10 回中8〜9回は上手い方が勝つでしょう」と答えました。若干主観も入ってはいますが、Magic とは本来そういうものだとの考えからです。

さて、このシーズン、『レアゲー』『運ゲー』という言葉は何度耳にしたか分からないほどでした。

確かに、シールドで開けたパックに強力な決定打が無いと、それだけで勝つ見込みがほとんど無いという『レアゲー』であることは事実です。しかし、現環境の覇者達の名前を見る限り、それが即、運否天賦のゲームであることにはなることにはならないと考えます。

では、勝利と敗北を分けたものは一体どこに存在していたのでしょうか?

オンスロート発売から 1 週間後、現環境初のグランプリが宇都宮で行われました。その覇者となったのが古豪として知られる橋本玲氏であったことは、皆様もご存知かと思います。

彼がその参戦レポートで勝てる状況のイメージとして述べているのは、『レアに辿りつければ良い』ことでした。

そう、この世界の「秩序」は前環境(オデッセイ・ブロック)とは一変していたのです。特にシールドとドラフトの「秩序」が大きく異なる点に気づいたかどうかが、シーズン序盤では大きな決め手になりました。

逆に、ちょっと知っているつもりだった私などは、コモン重視の安定型デッキに向かってしまい失敗しています。これは第2回で書いた通りです。その選択が常に間違いというわけではないのですが、ことこの環境においては重大な見誤りとなってしまうのです。

再三になってしまうかもしれませんが、その理由として、「この環境に野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD)がいない」ことが挙げられるでしょう。コモンに強力な低マナ域クリーチャーが少ないのです。それは 3 マナ 2/2 …「変異」クリーチャーとあいまって、序盤のもたつきで圧倒されることが少ないことを意味します。また、より使いやすくなった 2 モード呪文としてのサイクリングで、もたついても被害を最小限に押さえられることも要因です。

もちろん、リミテッドはカード 1 枚 1 枚の価値が非常に高いゲームであり、1 日でプレイする回数も少ないため、多少の運による「ばらつき」は仕方のないことです。一つのミスの勝負への影響も小さくありません。

同程度の実力なら運が結果を大きく左右します。これは当然ですが、その「同程度」から抜け出した人間が、結局は勝つのだということなのです。

事実、今シーズンのグランプリでは、名のある強豪たちが結果を残しています。"Maher Oath" で知られる Robert Maher (Bob Maher Jr. と言った方が通りが良いかもしれません) はコペンハーゲンで優勝、ロサンゼルスで準優勝と大活躍を見せていますし、Nick Eisel というプレイヤーもフィラデルフィア・ロサンゼルスと連続でベスト 8 に残っています。もしこのゲームが運否天賦のものなら、こうはならないと思うのです。

構築されていく「ドラフト卓の秩序」

ドラフト卓、ことロチェスタードラフトのテーブルにおいては、「秩序」、言いかえると「共通理解事項」が存在します。これを守れないと、友好ドラフトの成立は難しく、結果良いデッキは生まれません。最悪の場合、試合後までも不信感を残してしまうことになります。ここがロチェスターの難しいところであり、面白いところであります。

そのような難局を、強豪たちはどのようにして乗り越えていったのでしょうか?

今シーズンは世界 5 ヶ所でグランプリが行われたわけですが、その決勝ドラフトでの「色の棲み分け」の様子を確認してみたいと思います。

各イベントとも、1 番席から順に最終的なデッキの色を並べてあります。◎、○はそれぞれ優勝者、準優勝者を示しています。各色を使った人数もカウントしてみました。

グランプリ・宇都宮(10 月 12-13 日開催、優勝:橋本玲)

白黒―緑―青黒―赤緑―赤緑―黒―◎白赤―○青赤

赤:4 人 緑:3 人 黒:3 人 白:2 人 青:2 人

グランプリ・コペンハーゲン(10 月 12-13 日開催、優勝:Robert Maher)

白黒―◎赤緑―白黒―青赤―○緑黒―青黒―白赤―青黒

赤:3 人 緑:2 人 黒:5 人 白:3 人 青:3 人

グランプリ・フィラデルフィア(10 月 26-27 日開催、優勝:Jeff Cunningham)

○青白―黒赤―白緑―◎緑黒―青白赤―赤緑―黒白―緑赤

赤:4 人 緑:4 人 黒:3 人 白:4 人 青:2 人

グランプリ・メルボルン(11 月 23-24 日開催、優勝:Ben Seck)

このイベントに関しては、Top 8 のデッキが公開されていないため、分析できませんでした。 優勝は白青赤(5 番席)、準優勝は白赤(2 番席)だった模様です。

グランプリ・ロサンゼルス(11 月 23-24 日開催、優勝:Philip Freneau)

黒緑―白青―○緑赤―◎黒白―青赤―緑赤―白赤黒―緑赤

赤:5 人 緑:4 人 黒:3 人 白:3 人 青:2 人

このイベントに関しては、誰が何番席か明示されていなかったので、スイスラウンド 1 位の Brian Hegstad が 5 番席を選んだと仮定しました。

こうして結果をざっと眺めてみると、色々なことが確認できます。青は弱いですが、卓に使うプレイヤーが 2 人以下なら優勝争いに絡むことができそうですし、緑は人気色と組むのが大前提ですが、上手くドラフトできれば際立つ強さを持っています。

また、1 番と 2 番の使う色がほとんど被っていない所にも注目できそうです。これは、1 番の最序盤のピックが白であれば 2 番は緑に行く、などという暗黙の了解があるからに他なりません。もちろん、白緑という組み合わせが非常に弱いという前提知識があってのことなのです。

他にも、学べることは多そうです。自分でドラフトをするのはもちろん重要ですが、上手いプレイヤーのドラフトを見学するのも非常にためになります。

これからのリミテッド〜グランプリ京都に向けて

これから季節は冬に入り、プロツアー予選はエクステンデッドへと舞台を移します。既にプロツアー・ヒューストンの結果は伝えられていますし、国内では年末恒例の"Finals 2002"も近づいています。皆さんの関心も構築戦へと移っている頃でしょう。私も、実はその 1 人です。

しかし、リミテッドはやらないと一気に下手になります。このシーズンで力をつけてきたと自覚できている方ならなおさらです。構築戦の練習をしていく中でも、息抜きにリミテッドをやると良いかと思います。幸い、この世の中には"Magic Online"という便利なものもあるのですから。

1 月末には「レギオン」のプレリリース・トーナメント、そして 3 月にはグランプリ・京都が控えています。これは 5 月のプロツアー・横浜の予選でもあることから、皆さんの関心も強くなっていくことでしょう。

その時、「体系化された知識」は大きく役立つものと考えます。このブレイクを利用して、リミテッドのプレイングについて再確認してみるのも良いのではないでしょうか。

また 2 週間後にお会いしましょう。

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