土地破壊デッキは死んだのか!?

GASP

はじめに

どうも、こんにちは。GASPです。

突然ですが、皆さん、好きなデッキはありますか? 私の場合、ギミックの多いデッキや相手を妨害するタイプのデッキが大好きです。最近のデッキで言うなら、青緑のマッドネスデッキ、タッチ白の黒コントロールなどがそれにあたります。デッキタイプ的には、使うのは下手ですがカウンターデッキ、手札破壊デッキ、そして土地破壊デッキが私の好みです。

カウンターデッキは現在のマジックにおいて決して廃れる事の無いデッキです。手札破壊デッキも、トーメントにおける黒の隆盛で勢いを取り戻しています。しかし、土地破壊デッキだけはマスクス・ブロックの退場後、まともに姿を見かける事はなくなってしまいました。かつては世界選手権で準優勝までした土地破壊デッキ。このデッキはもう既に過去のものとなってしまったのでしょうか? 今回は、「土地破壊デッキ」に関する考察です。

「土地破壊デッキ」とは

言うまでもなく、「土地破壊デッキ」とは「対戦相手の土地を破壊して、身動きを取れなくする」デッキです。デッキタイプとしては手札破壊と共に、マジックのかなり初期の頃から存在するアーキタイプです。しかし、《精神錯乱/Mind Twist》や《Hymn to Tourach》、《惑乱の死霊/Hypnotic Specter》といった超強力カードに支えられた手札破壊とは違い、土地破壊デッキは思うような成績は残せていなかったようです。

土地破壊デッキが一つの強力なデッキとして挙げられたのはウルザズ・レガシーが発売されてから。そう、かのダーウィン・キャッスル氏が「マジック・インビテーショナル」で優勝した際にデザインしたカード、《なだれ乗り/Avalanche Riders》が加わったのです。代表的なものとして、1999年世界選手権で準優勝に輝いたマーク・ル・ピーン氏のデッキを挙げましょう。

Mono-Red Land Destruction Decks /Mark Le Pine(1999年世界選手権ファイナリスト)
Main Deck Sideboard
4 ジャッカルの仔/Jackal Pup
4 モグの狂信者/Mogg Fanatic
3 投火師/Fireslinger
4 なだれ乗り/Avalanche Riders

4 略奪/Pillage
4 石の雨/Stone Rain
4 ショック/Shock
2 弧状の稲妻/Arc Lightning
3 ボガーダンの鎚/Hammer of Bogardan
4 呪われた巻物/Cursed Scroll

2 古えの墳墓/Ancient Tomb
2 ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment
4 不毛の大地/Wasteland
16 山/Mountain
サイドボードは割愛

このデッキは俗に言う「ポンザ」デッキで、相手の軽量クリーチャーは片っ端から火力で除去し、計12枚入っている土地破壊カードで相手の足を止めつつ、最後は優秀な軽コストクリーチャーと使い減りしない火力の《ボガーダンの鎚》《呪われた巻物》で勝負を決めるデッキです。

当時使われていたデッキの多くは土地を絞っていて、大体20枚から22枚であったため、土地破壊はうまく機能したようです。何より、《モグの狂信者》《ジャッカルの仔》といった、今でもエクステンデッドで使われているクリーチャーの強さによるものもあったと思います。また、《なだれ乗り》は土地を破壊しつつ時には攻撃、時には防御にも参加する、非常に優秀な土地破壊クリーチャーです。そのため、土地破壊をしながらも速攻が可能であり、当時存在した「リビング・デスデッキ」や黒単「ヘイトレッド」デッキに相性がよく、結局この世界選手権で2名がベスト8に進出しています。残念ながらマーク・ル・ピーン氏は決勝戦において、事実上、土地破壊の効かないカイ・ブッディ氏の「赤茶単デッキ」に敗れてしまいましたが、その強さを世界に知らしめたと思います。

危うくなった「ポンザ」の地位

ラース・サイクルがスタンダードから退いた後でも、赤単土地破壊(これ以降赤単土地破壊デッキは全て「ポンザ」と呼ばれるようになりました)デッキは人気がありました。そう、メルカディアンマスクスから恒久的に特殊地形を破壊できる《黄塵地帯/Dust Bowl》と、あの悪名高い《リシャーダの港/Rishadan Port》が加わったのです。強力なフィニッシャー、《マスティコア/Masticore》や大量除去の《火薬樽/Powder Keg》も加え、全ては土地破壊デッキにとって風上かと思えました。

ですが、ラース・サイクルの退場によって強力なクリーチャー群を失った「ポンザ」は、違う形のデッキとなり、またこの時土地破壊デッキが得意とした相手が緑単コントロール(通称トリニティ)ぐらいしかなく、かつての強さはなくなってしまいました。この年の世界選手権における土地破壊デッキの最上位はクリス・ベナフェル氏の12位(ただしスタンダード部門は4位)でした。ここで、彼のデッキを紹介しましょう。

Mono-Red Land Destruction Decks /Chris Benafel(世界選手権12位)
Main Deck Sideboard
3 マスティコア/Masticore
4 なだれ乗り/Avalanche Riders
1 稲妻のドラゴン/Lightning Dragon

3 緋色のダイアモンド/Fire Diamond
2 火薬樽/Powder Keg
2 地盤の亀裂/Tectonic Break
4 略奪/Pillage
4 石の雨/Stone Rain
3 地震/Earthquake
4 炎の印章/Seal of Fire
2 ショック/Shock
2 ボガーダンの鎚/Hammer of Bogardan
1 落盤/Cave-In

14 山/Mountain
4 ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment
3 黄塵地帯/Dust Bowl
4 リシャーダの港/Rishadan Port
サイドボードは割愛

一年前の「ポンザ」に比べるとかなりデッキが変わっているのが分かります。軽量クリーチャーは消え、代わりに土地破壊カードが多く追加されています。《なだれ乗り》こそ残っているものの、速攻は不可能となり、ある程度土地を破壊し続けないといけません。そのため、この頃からデュエリストたちはこう言うようになりました。

「回った土地破壊はどんなデッキにも勝てるが、回らなかったらどのデッキにも勝てない」、と。

まさしくその通りだと思います。私も幾度となく土地破壊デッキを使いましたが、上バージョンのデッキを使った時、青単相手に7ターン連続で土地破壊カードを引いたものの、7ターン連続で土地を引かれてしまい、負けてしまった事があります。

このため、土地破壊デッキは次第にリスキーなデッキとして認識されていき、人気も下がっていきました。

やがてマスクス・ブロックがスタンダードから消えてインベイジョン・ブロックがスタンダードに入ってきて…土地破壊デッキは表舞台から完全に姿を消してしまいました。

土地破壊デッキの凋落

インベイジョンがスタンダードに参入してからは、トーナメント環境は多色が支配し、土地破壊デッキにとって最高のフィールドが出来上がったかのように思えました。しかし実際、これ以降土地破壊デッキはほとんど姿を見せません。

この時代の主なデッキは、土地の枚数に余裕がある上、クリーチャーを何体除去しても後続の出てくる白単レベル、2ターン目に《ヤヴィマヤの火/Fires of Yavimaya》を張って、3ターン目に赤には除去できない5/5クリーチャーが殴ってくる赤緑ファイヤーズ、土地を破壊しても相手の攻め手に対する解決にはならない上、カウンターも豊富な青黒ネザーゴー、メルカディアン・マスクスのピッチ・スペルで土地破壊に対する耐性の付いた青単ブルースカイ…メタデッキは土地破壊にとって厳しい相手ばかりでした。そのためこれ以降、大きな大会で土地破壊デッキが好成績を残した事はありません。

やがてマスクス・ブロックも抜け、土地破壊デッキの最後の生命線であった《黄塵地帯》と《リシャーダの港》が環境から消え、ついに土地破壊デッキは消えてしまったように思えます。

勿論、オデッセイにも土地破壊カードはあります。その急先鋒は《溶岩のあぶく/Lava Blister》であり、一時は土地破壊デッキの中核を担うとも思われたのですが、不発に終わっています。では、なぜ今の環境で土地破壊デッキは活躍できないかを考えてみましょう。

土地破壊デッキが勝てない理由

前述の《溶岩のあぶく》は、対象の特殊地形を破壊するか、プレイヤーが6点のダメージを受けるかを選ばせるカードで、どちらに転んでも相手は手痛いダメージを受けます。その上現在は特殊地形が蔓延しており、対象に事欠く事はありません。ではなぜこのカードが使われないのか。それは、今の土地破壊デッキの形のためです。

今は1999年時のような優秀な小型クリーチャーがいません。そのため、デッキの構成はどうしても2000年バージョン、つまり数体の大型クリーチャーで殴り倒すタイプのデッキになります。序盤は土地とクリーチャーを破壊し、終盤大型クリーチャーで相手を殴り倒す、そういう戦い方になります。そんなデッキにとって、序盤の6点が何の役に立つでしょうか。この手のカードは序盤から速攻するデッキでのみ役に立つのです。

また、土地破壊デッキは手札破壊デッキと違って全体的に呪文コストが重いです。そのため、1ターンに複数の呪文を使う事は難しく、土地に対処すればクリーチャー対策が出来ず、クリーチャーを除去していたら土地は破壊できません。ですから、相手が速攻デッキの場合はクリーチャーの対処に追われる事となり、カウンターデッキに対しては手札破壊のように連発する事も出来ません。

その上、土地破壊デッキは先攻を取らないと非常に厳しい戦いになります。土地破壊デッキは基本的に3ターン目から土地破壊を開始します。相手がクリーチャーデッキなら2ターン目にクリーチャーを除去し、3ターン目に土地破壊も出来るでしょうが、常に受身のカウンターデッキは必ず(土地事故でも起こしていない限り)青マナの出る土地が2つ立っています。土地破壊デッキが先攻なら、土地破壊とカウンターの1対1交換で済むでしょうが、後攻の場合、相手の立っている土地は3枚。カウンターされた上、ライブラリー操作さえ行われてしまいかねません。そして土地破壊デッキが後攻の場合、3ターン目の土地破壊を通さない限り相手が先に4マナに到達するため、こちらの土地破壊に対応して《嘘か真か/Fact or Fiction》を打たれる事もしばしばです。こうなってしまえばもうジリ貧。相手の豊富な手札によって、こちらの手はことごとく妨害されてしまうのです。

そして、速攻デッキに対しては、かつては序盤クリーチャー除去で凌いで後半、大型クリーチャーを出せれば押し切る事が出来ましたが、今やクリーチャーが速すぎます。現在のステロイドは2マナ圏にクリーチャーが集中しており、除去するまでにかなりのダメージを食らってしまいます。そして、2マナとは思えないクリーチャー、《野生の雑種犬/Wild Mongrel》は、ダメージによる除去も難しいです。除去しないわけにもいかないし、かといってそちらに手を焼いていると土地が破壊できない。ジレンマです。本当に、《なだれ乗り》が抜けた穴は大きいです。

また、現環境に除去が多すぎるのも問題です。赤の火力の復権は言うまでも無く、ほとんどのクリーチャーを殺せる《終止/Terminate》はありますし、何より今の黒にほぼ確実に入っている《チェイナーの布告/Chainer's Edict》は、クリーチャーを並べないタイプの土地破壊デッキにとってまさに最悪の除去と言えます。

土地破壊デッキの可能性

では、土地破壊はもう勝てないのかと言うと、状況は厳しいですが決してそんな事はないと思います。

土地破壊デッキと言えば赤ですが、今の環境で赤単土地破壊はさすがに厳しいので選択肢からは外れます。2色目の候補として上げられるのはやはり黒と緑です。まず黒の場合、優秀な除去として《チェイナーの布告》をこちらも使う事が出来ます。また、必要ならば《強迫/Duress》で手札破壊も行えます。そして除去が多いという環境に対しては、《火葬のゾンビ/Pyre Zombie》がその解答となってくれるでしょう。欠点はエンチャントが壊せない事と、マナ加速が無いため土地破壊が3ターン目からしか行えないという事です。しかし後者に関しては、対抗策があります。オデッセイのレア、《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》です。2ターン目にこれを出し、次の相手のターンにサクリファイスすれば相手は土地を置けなくなり、その次のターンからスムーズに土地破壊を行う事が出来ます。勿論、1マナは立っているため相手が青なら《攪乱/Disrupt》や《魔力の乱れ/Force Spike》の恐れはありますが、《対抗呪文/Counterspell》を待たれるよりよほどマシでしょう。

そして2色目を緑にした場合、黒と違って除去が薄くなってしまう弱点はありますが、《極楽鳥/Birds of Paradise》や《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》によって2ターン目からの土地破壊が可能になります。また、緑の優秀なクリーチャーによって99年の土地破壊デッキのような、速攻系土地破壊デッキを作る事も可能です。このデッキならば、《溶岩のあぶく》も十分使用に耐えうるカードとなるでしょう。フィニッシャーは、使い減りしない火力が無いためキッカー込み《ウルザの激怒/Urza's Rage》か、クリーチャーならば《猛烈に食うもの/Magnivore》や《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》あたりが妥当ではないでしょうか。

いずれにせよ、土地破壊デッキは2色目を効率的に組み合わせる事によって、まだまだ戦える事は出来ると思います。

終わりに

現在、土地破壊デッキは苦境の時を迎えています。しかし逆に言えばそれは誰にも警戒されていないデッキでもあり、メタにはまった土地破壊デッキは非常に効果的な戦いが出来ると思います。私自身、現在土地破壊デッキを作っていないため、現在のメタの中心である赤緑ステロイド、青緑マッドネス、青黒サイカトグとどれくらい戦えるかは定かではありません。それでも、土地破壊デッキは「回った時はどんなデッキにも勝てるデッキ」なのです。それならば、「回った時」を期待するよりも「いつでもよく回る」土地破壊デッキを目指してみるのもいいのではないでしょうか。

最後にもう一つ、土地破壊デッキの利点として、手札破壊デッキによくある「相手のトップデッキで負ける」事はほとんどありません。一度築いた有利はそう簡単には覆されないという長所もあるのです。

さあ、あなたも土地破壊デッキを作ってみませんか?

今回の考察はこれにて終了です。あなたの対戦相手が十分なマナに恵まれませんように。

それでは、拙い上にやたらと長い文章ではありましたが、お付き合いいただきありがとうございました。

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