GP札幌直前講習・その1〜OBC中心デッキ総ざらい〜

吉川祐輔

MTGの最高峰、世界選手権も開幕し、グランプリ札幌も目前です。そこで、確認の意味も込めて、今回から8・9月のプロツアー予選フォーマットであるオデッセイ・ブロック構築(OBC)の考察を行っていきたいと思います。どうぞお付き合いください。

プロツアー大阪より

プロツアー大阪を席巻したのは、優勝者のKen Ho氏やKai Budde氏の使用した青緑系デッキと、準優勝のOlivier Ruel氏やRobert Dougherty氏はじめとするMagic Colonyのプレイヤー達が使用した黒単コントロールでした。また、ベスト8にはOsyp Lebedowicz氏が使用した青黒サイカトグデッキも顔を覗かせています。

ジャッジメントが導入され、いくつかのプロツアー予選やGPトライアルが行われた現在でも、その勢力図はあまり変わってはいないようです。そこで、予選の結果も踏まえ、デッキタイプ別に6つのデッキを『中心デッキ』として解説していきます。

青緑ターボ・スレッショルド

◎中心カード
《敏捷なマングース/Nimble Mongoose(OD)》《熊人間/Werebear(OD)》《クローサの獣/Krosan Beast(OD)》
《野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD)》《日を浴びるルートワラ/Basking Rootwalla(TO)》
《留意/Mental Note(JU)》《入念な研究/Careful Study(OD)》
《不可思議/Wonder(JU)》
《霊気の噴出/AEther Burst(OD)》
《ケンタウルスの庭園/Centaur Garden(OD)》

スレッショルドを達成することで恐ろしく高効率となる生物群を主力に据えた、高速打撃型青緑デッキです。

序盤は8枚のドロー操作兼墓地増量カードを連打し、その過程で僅かながらのアドバンテージを得るとともに手札を充実させていきます。クリーチャーが真価を発揮しだすのが早くとも3〜4ターン目となりますが、展開速度はかなり速いものを持っています。

スレッショルドを前提としたデッキであるため、《ケンタウルスの庭園/Centaur Garden(OD)》が投入でき、これが同じようなクリーチャーの争いとなるこの環境下においては非常に効力を発揮しますし、コントロールデッキとの戦いにおいても最後の詰めを相手の予想以上に早めることができます。

難点としては、土地を切り詰めることになるためややドロー操作頼みになる点と、消耗戦にもつれ込んだ場合の息切れでしょうか。

上記の例には挙げませんでしたが、《森を護る者/Sylvan Safekeeper(JU)》もこのデッキによく合うと思われます。

青緑マッドネス

◎中心カード
《野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD)》《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》
《尊大なワーム/Arrogant Wurm(TO)》《日を浴びるルートワラ/Basking Rootwalla(TO)》《堂々巡り/Circular Logic(TO)》
《入念な研究/Careful Study(OD)》《セファリッドの物あさり/Cephalid Looter(OD)》
《綿密な分析/Deep Analysis(TO)》《ワームの咆哮/Roar of the Wurm(OD)》
《不可思議/Wonder(JU)》

数ある青緑系デッキの中で、現在最も爆発力があると思われるのがこの形です。8体もしくはそれ以上入っている”共鳴者”カードから繰り出されるマッドネス呪文(その多くは割安なクリーチャー)を武器に、一気呵成に相手を攻め立てます。

爆発力は折り紙つきなのですが、こと安定性に関しては《入念な研究/Careful Study(OD)》頼みというのが現状です。この部分に関しては、個人個人のチューニングが物を言うことになるでしょう。また、黒系コントロールとの対戦では、”共鳴者”の生存が勝負の分かれ目となります。

序盤はともかく、中終盤に入ったときの押しの弱さに課題があります。

青緑クワイエット・ロアー

◎中心カード
《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》
《ワームの咆哮/Roar of the Wurm(OD)》《綿密な分析/Deep Analysis(TO)》《クローサ流再利用/Krosan Reclamation(JU)》
《野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD)》《アクアミーバ/Aquamoeba(TO)》
《入念な研究/Careful Study(OD)》《堂々巡り/Circular Logic(TO)》
《触媒石/Catalyst Stone(OD)》

《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》から導かれるフラッシュバック呪文を軸に据えた、アドバンテージ能力の非常に高いタイプの青緑デッキです。《思索》さえ決まれば、中盤以降生物のサイズ負けすることはほとんどなくなりますし、打線も途切れることはおそらくないでしょう。

《思索》により柔軟性も非常に高く、特にサイド後の《一瞬の平和/Moment's Peace(OD)》《クローサ流再利用/Krosan Reclamation(JU)》《天啓の光/Ray of Revelation(JU)》を持ってきたりなど、局面に合わせた戦いができます。また、《思索》の隠れた効果として、スレッショルド到達速度も結構速く、中盤での《堂々巡り/Circular Logic(TO)》の運用が楽になったりもします。

ただ、いくら《熊人間/Werebear(OD)》や《触媒石/Catalyst Stone(OD)》を使うとはいえ、序盤のマナベース次第という感が拭えないのが実情です。

黒単コントロール

◎中心カード
《チェイナーの布告/Chainer's Edict(TO)》《無垢の血/Innocent Blood(OD)》《もぎとり/Mutilate(TO)》
《精神ヘドロ/Mind Sludge(TO)》《消えないこだま/Haunting Echoes(OD)》
《ナントゥーコの影/Nantuko Shade(TO)》《ラクァタスのチャンピオン/Laquatus's Champion(TO)》
《腐臭の地/Rancid Earth(TO)》
《魔性の教示者/Diabolic Tutor(OD)》《占骨術/Skeletal Scrying(OD)》
《陰謀団の貴重品室/Cabal Coffers(TO)》

対生物対処能力に重点を置き、《陰謀団の貴重品室/Cabal Coffers(TO)》からの大量のマナを利して《魔性の教示者/Diabolic Tutor(OD)》の柔軟性により戦うコントロールタイプの黒単デッキです。

対生物には8枚の《布告》と《もぎとり/Mutilate(TO)》、対コントロールには《精神ヘドロ/Mind Sludge(TO)》を決めてからの《消えないこだま/Haunting Echoes(OD)》という必殺技を擁している利点があります。

とはいえ、生物への対処の手段の大半がソーサリーなので、速攻能力やインスタントスピードで繰り出される生物、もっと端的には《被覆/Envelop(JU)》には弱いのが難点です。

また、マナが潤沢であることが前提のデッキですので、土地事故を起こしたり、同系デッキに《腐臭の地/Rancid Earth(TO)》などでマナを拘束されると中盤で非常に苦しい戦いを強いられます。

勝ち手段自体は薄く、読みやすいデッキなので、《陰謀団式療法/Cabal Therapy(JU)》は今後の鍵になる可能性があると言えるでしょう。

サイド後には、後述の《ブレイズ》デッキに変化する余地があります。

黒単《ブレイズ》

◎中心カード
《陰謀団の先手ブレイズ/Braids, Cabal Minion(OD)》
《催眠の悪鬼/Mesmeric Fiend(TO)》《ナントゥーコの影/Nantuko Shade(TO)》《顔なしの解体者/Faceless Butcher(TO)》《よろめく大群/Shambling Swarm(TO)》
《チェイナーの布告/Chainer's Edict(TO)》《腐臭の地/Rancid Earth(TO)》
《占骨術/Skeletal Scrying(OD)》

自分相手ともにマナを拘束する《陰謀団の先手ブレイズ/Braids, Cabal Minion(OD)》を中心に据え、低マナ域に生物を集中させた攻撃的黒デッキのOBC版です。上記の例には加えませんでしたが、タッチ色として青を加えたバージョンも存在し、その場合《影魔道士の浸透者/Shadowmage Infiltrator(OD)》や《霊気の噴出/AEther Burst(OD)》が入ることになります。

序盤ハメてしまえば一気に勝ちに向かえるので、パーマネントを展開しないデッキに強く、特に黒単コントロール型のデッキには非常に有利な戦いが望めます。そのため、現在の黒単コントロールの多くはサイド後からこの形に変化するものが主流です。

メインからこのデッキで戦う場合、勝ち切るまでの速度は《ナントゥーコの影/Nantuko Shade(TO)》次第であり、OBC環境には3マナ以下の優秀生物が少ないことが災いして、《ブレイズ》を有効活用することができないことも多々あるでしょう。また、緑の生物にはどうしてもサイズ負けしてしまうのが難点です。

《もぎとり/Mutilate(TO)》もあると良いのですが、《催眠の悪鬼/Mesmeric Fiend(TO)》と相性が悪いのがジレンマです。その《悪鬼》と相性の良い《陰謀団式療法/Cabal Therapy(JU)》は、検討の価値は十分にあることでしょう。

青黒サイカトグ

◎中心カード
《激動/Upheaval(OD)》
《サイカトグ/Psychatog(OD)》《ゾンビの横行/Zombie Infestation(OD)》
《チェイナーの布告/Chainer's Edict(TO)》《無垢の血/Innocent Blood(OD)》《霊気の噴出/AEther Burst(OD)》
《行き詰まり/Standstill(OD)》《綿密な分析/Deep Analysis(TO)》《強制/Compulsion(TO)》
《堂々巡り/Circular Logic(TO)》《被覆/Envelop(JU)》

スタンダードでは形を変えながら今もなお君臨するデッキタイプですが、OBCにおけるこのデッキは大きく趣が異なります。

まず、この環境には実用に耐えるカウンター呪文が少なく、また生物中心の構成が多くなるため、その対処にデッキの大部分がそれに割かれることになります。時には《もぎとり/Mutilate(TO)》の投入もありえるでしょう。

そして、ここからは一緒なのですが、良くも悪くも《激動/Upheaval(OD)》。これに尽きます。黒単コントロールには《ゾンビの横行/Zombie Infestation(OD)》で、青緑には《サイカトグ/Psychatog(OD)》で決めることになるでしょう。

黒単コントロールには、エンドフェイズのアクションや《行き詰まり/Standstill(OD)》により優位性を保つことができそうですが、大量の生物には苦しい戦いを迫られそうです。

その他のデッキ

以上、今後GPまで中心をなすと思われる6つのデッキタイプについて解説しました。もっとも、この分け方は便宜上のものですので、ご了承願います。

他にもデッキタイプはいくつか存在するので、少しコメントを加えてみようと思います。

赤単バーン

いわゆる『処罰者』カードを軸とした構成になりますが、「あと5点」に苦しむことが多そうです。

黒赤ゾンビ・バーン

福岡のPTQで現れたデッキタイプです。黒系全般および一部の青緑には優位に戦えそうですが、《ゾンビの横行/Zombie Infestation(OD)》《占骨術/Skeletal Scrying(OD)》に依存する感があります。

白系ウィニー

ジャッジメントの参入で登場しましたが、《もぎとり/Mutilate(TO)》への解答を迫られることになりそうです。

緑白、緑黒

現状では緑青の下位互換と言うしかなさそうです。

今回はここまでの情報を踏まえ、中心となるデッキの枠組みを解説して来ましたが、あくまで現時点での情報であり、今後大きく変化していくのは間違いないでしょう。16日はいよいよ世界選手権3日目、OBCでベスト8を賭けた戦いが繰り広げられます。注目しましょう。

次回はその世界選手権3日目のデッキ分析を行いたいと思います。

長文駄文お読みいただき、ありがとうございました。ご意見、ご感想お待ちしております。

文責:吉川祐輔
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