ブラジルのCarlos "the Brazilian Huey" Romaoの優勝で幕を閉じた2002年度世界選手権。その中でも、ベスト8を賭けた最後の戦いとなった3日目のOBCでは、数々の熱戦が繰り広げられました。
今回はその分析からGP札幌への方針を探ってみたいと思います。
なお、この記事を作成するに当たってはSideboard Onlineの速報記事を参考に致しました。
まずはデッキ分布を見てみることにします。3日目の参加者全237名のデッキを独自に集計・分類しました。
| 青緑系 | クワイエット・ロアー | 68 | 28.7% |
| (《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》が2枚以上) | |||
| マッドネス | 18 | 7.6% | |
| (《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》が1枚以下) | |||
| ターボ・スレッショルド | 22 | 9.3% | |
| (《敏捷なマングース/Nimble Mongoose(OD)》《留意/Mental Note(JU)》入り) | |||
| 108 | 45.6% | ||
| 黒系 | 黒単コントロール | 56 | 23.6% |
| 黒単ブレイズ | 11 | 4.6% | |
| 青黒ブレイズ | 14 | 5.9% | |
| 赤黒ブレイズ | 1 | 0.4% | |
| 82 | 34.6% | ||
| 白緑ビートダウン | 16 | 6.8% | |
| 白青ビートダウン | 11 | 4.6% | |
| 青黒激動 | 10 | 4.2% | |
| 《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake(JU)》 | 3 | 1.3% | |
| 《独房監禁/Solitary Confinement(JU)》 | 3 | 1.3% | |
| その他 | 赤緑、青黒コントロール、白赤、青赤 | 各1 | 各0.4% |
青緑が45%、黒系が35%で、合わせると全体の8割を占めるという、ほとんど予想通りの結果と言えるものになりました。やはり《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》のアドバンテージを活かせる青緑、圧倒的なコントロール力が魅力の黒単コントロールが人気だったようです。
次に3日目無敗のデッキを見てみると、以下のようになります。
| デッキタイプ | 使用者数 | 使用者 [国名] |
|---|---|---|
| 青緑マッドネス | 3 | Jeroen Remie [NLD], Amiel Tenenbaum [FRA], Leonardo Uzcategui [VEN] |
| 黒単コントロール | 2 | Gary Wise [ENG], Yujian Zhou [SGP] |
| 青緑ターボ・スレッショルド | 1 | David Humpherys [USA] |
| 青緑クワイエット・ロアー | 1 | Dario Minieri [ITA] |
| 白青《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》 | 1 | Tomi Walamies [FIN] |
| 白緑ビートダウン | 1 | Arvi Limpadanai [THA] |
前回の解説でも書いた通り、爆発力を誇る青緑マッドネスが3人の全勝者を出す結果になりました。しかし、この中で最終ベスト8に残ったのはDavid Humpherysだけであり、その点でデータとしての信頼度に疑いがあるのかもしれません。
さて、ここからは各デッキ個別の考察に入りたいと思います。
まずは最大勢力を誇った青緑から。どのデッキを見ても《野生の雑種犬/野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD)(OD)》《熊人間/Werebear(OD)》といったお馴染みの面々が並んでいたのですが、その中においてもまさに洗練されていたと言えるのがKai Buddeはじめとするグループの《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》デッキとDavid HumpherysはじめとするYour Move Games謹製ターボ・スレッショルドでしょう。
| Quiet Speculation - Mark Ziegner (OBC) / Worlds 2002 | |
|---|---|
| Main Deck | Sideboard |
3 熊人間/Werebear(OD) 4 野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD) 3 不可思議/Wonder(JU) 3 入念な研究/Careful Study(OD) 3 触媒石/Catalyst Stone(OD) 1 綿密な分析/Deep Analysis(TO) 3 被覆/Envelop(JU) 3 灰毛の定め/Grizzly Fate(JU) 4 留意/Mental Note(JU) 1 一瞬の平和/Moment's Peace(OD) 4 物静かな思索/Quiet Speculation(JU) 4 ワームの咆哮/Roar of the Wurm(OD) 1 激動/Upheaval(OD) 11 森/Forest 12 島/Island |
1 ドングリの収穫/Acorn Harvest(TO) 4 霊気の噴出/AEther Burst(OD) 1 現実の修正/Alter Reality(TO) 1 熊の谷/Bearscape(OD) 1 触媒石/Catalyst Stone(OD) 1 被覆/Envelop(JU) 1 灰毛の定め/Grizzly Fate(JU) 1 クローサ流再利用/Krosan Reclamation(JU) 2 一瞬の平和/Moment's Peace(OD) 1 天啓の光/Ray of Revelation(JU) 1 激動/Upheaval(OD) |
Mark ZiegnerとKen Krounerというベスト8を2人送り出し、Kai Buddeも使用して5-1という結果を出した、このクワイエット・ロアーはかなり野心的な構成がなされています。純粋にクリーチャー・カードと言えるのはは《野生の雑種犬/野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD)(OD)》《熊人間/Werebear(OD)》だけで、あとは《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》をひたすら活かせるようにフラッシュバック・カードのオンパレードになっています。《灰毛の定め/Grizzly Fate(JU)》は最近になって見られるようになったカードですが、《触媒石/Catalyst Stone(OD)》まで入っているこのデッキにおいては、重さも気にならず、存分にその力を活かせることでしょう。《チェイナーの布告/Chainer's Edict(TO)》などといった単体除去ではとても対処できず、《もぎとり/Mutilate(TO)》にしても1対1交換(あるいはそれ以下)で、非常に黒コンに良く作用します。また、この手のデッキに入っていることが少ない《留意/Mental Note(JU)》も、墓地に落ちても有効活用できるフラッシュバック・カードを大量に投入することにより活かされています。
| U/G Threshold - Dave Humpherys (OBC) / 2002 Worlds | |
|---|---|
| Main Deck | Sideboard |
4 日を浴びるルートワラ/Basking Rootwalla(TO) 4 敏捷なマングース/Nimble Mongoose(OD) 4 熊人間/Werebear(OD) 4 野生の雑種犬/Wild Mongrel(OD) 4 不可思議/Wonder(JU) 4 霊気の噴出/AEther Burst(OD) 4 入念な研究/Careful Study(OD) 4 留意/Mental Note(JU) 2 ワームの咆哮/Roar of the Wurm(OD) 4 行き詰まり/Standstill(OD) 10 島/Island 8 森/Forest 3 ケンタウルスの庭園/Centaur Garden(OD) 1 セファリッドの円形競技場/Cephalid Coliseum(OD) |
1 熊の谷/Bearscape(OD) 4 被覆/Envelop(JU) 1 森/Forest 2 クローサ流再利用/Krosan Reclamation(JU) 3 幻影のケンタウロス/Phantom Centaur(JU) 3 リスの巣/Squirrel Nest(OD) 1 激動/Upheaval(OD) |
一方こちらの青緑ターボ・スレッショルドは、序盤の加速とその勢いの持続を念頭に組まれています。
構成自体は非常にベーシックで分かりやすいものになっていて、対黒コンよりもどちらかと言うと対青緑指向という意志が見えます。メインに《不可思議/Wonder(JU)》4枚というのはその最たるものでしょう。重いスペルはほとんど無いのですが、《ワームの咆哮/Roar of the Wurm(OD)》を2枚だけ採用しているあたり、バランス感覚も素晴らしいものがあります。さすがはBenzoを生み出したYMGだと改めて感嘆させられる次第です。
メインが青緑に向いている分、サイドボードは対黒と思われるもの中心で、《幻影のケンタウロス/Phantom Centaur(JU)》《リスの巣/Squirrel Nest(OD)》が各3枚、《熊の谷/Bearscape(OD)》1枚に《被覆/Envelop(JU)》4枚、《激動/Upheaval(OD)》1枚まで完備されています。おそらく全投入されることはなく、状況に合わせて選択するのでしょう。《森》が1枚入っているのは、《幻影のケンタウロス/Phantom Centaur(JU)》《リスの巣/Squirrel Nest(OD)》投入時のマナバランスの補正と思われ、この辺の心配りも憎いものがありますね。
かと言って対黒一辺倒と言うわけでもなく、《幻影のケンタウロス/Phantom Centaur(JU)》は対同キャラにも投入したり、などと、メインはシンプルな構成を取り、汎用性のあるカードをサイドに置いておくことで、局面(先手か、後手か、時間があるかないかなど)への柔軟な対応が出来るようになっているのです。
青緑ターボ・スレッショルドそのものは全体の1割にも満たず、クワイエット・ロアーの3分の1以下だったのですが、このブレイクにより日本でもこの種のデッキが増えてくることは想像に難くありません。私自身が個人的にベストだと感じたのもこの青緑ターボ・スレッショルドでした。
一方、大阪で猛威を振るった黒コントロールですが、青緑への対応からまた一つ形を変えつつあります。
| Mono Black Control - Gary Wise (OBC) / 2002 Worlds | |
|---|---|
| Main Deck | Sideboard |
4 ナントゥーコの影/Nantuko Shade(TO) 4 チェイナーの布告/Chainer's Edict(TO) 4 魔性の教示者/Diabolic Tutor(OD) 1 消えないこだま/Haunting Echoes(OD) 4 無垢の血/Innocent Blood(OD) 3 精神へドロ/Mind Sludge(TO) 4 もぎとり/Mutilate(TO) 4 腐臭の地/Rancid Earth(TO) 3 占骨術/Skeletal Scrying(OD) 3 汚れた契約/Tainted Pact(OD) 23 沼/Swamp 3 陰謀団の貴重品室/Cabal Coffers(TO) |
4 陰謀団の先手ブレイズ/Braids, Cabal Minion(OD) 3 棺の追放/Coffin Purge(OD) 4 顔なしの解体者/Faceless Butcher(TO) 3 催眠の悪鬼/Mesmeric Fiend(TO) 1 忍び寄る吸血者/Stalking Bloodsucker(OD) |
目新しいカードとしては、《汚れた契約/Tainted Pact(OD)》でしょう。先のPTQヒューストン東京1次を制した安藤玲二氏のデッキにも採用されていましたが、こと「引き合い」になりがちな黒コン対決において、この新しい《Demonic Consultation(IA)》は大きなアドバンテージとなり得るでしょう。また、インスタントが極端に少ないこのデッキにマナ運用の柔軟性、すなわち「テンポ」を与えてくれるという作用もあります。
今まで採用されてこなかった理由の一つに、「《沼/Swamp》を続けて引いてしまいアドバンテージを失う危険性」があったとは思います。実際、《沼/Swamp》がデッキの約4割を占めているわけで、ひとたび《沼/Swamp》が出てしまえば、選択は非常に難しいものになるでしょう。ですが、そうまでしてカードを探さなければ勝ち抜けない現状がそこにはあったのです。
《被覆/Envelop(JU)》の登場によって《もぎとり/Mutilate(TO)》の信頼度が低下した上に、異常なまでに大きく速い緑の生物群。黒コンに狙いを定めた《激動/Upheaval(OD)》デッキの存在。長らく王座にあった黒コンですが、ここに来て狙われることになった格好です。
青緑と黒コンに制圧されていたOBCのフィールドですが、世界選手権ではそれに対抗しうるデッキもいくつか現れました。
| U/W物静かな思索/Quiet Speculation(JU) - Tomi Walamies (OBC) / 2002 Worlds | |
|---|---|
| Main Deck | Sideboard |
4 敬愛される司祭/Beloved Chaplain(OD) 3 栄光/Glory(JU) 3 巡視犬/Patrol Hound(OD) 4 拒絶魔道士の代言者/Spurnmage Advocate(JU) 2 陽光尾の鷹/Suntail Hawk(JU) 4 不屈の部族/Tireless Tribe(OD) 4 金切るときの声/Battle Screech(JU) 2 綿密な分析/Deep Analysis(TO) 4 聖餐式/Divine Sacrament(OD) 2 被覆/Envelop(JU) 1 虹色の断片/Prismatic Strands(JU) 4 物静かな思索/Quiet Speculation(JU) 13 平地/Plains 6 島/Island 4 広漠なるスカイクラウド/Skycloud Expanse(OD) |
1 司令官イーシャ/Commander Eesha(JU) 2 綿密な分析/Deep Analysis(TO) 2 被覆/Envelop(JU) 1 狂乱した浄化/Frantic Purification(TO) 2 カーターの願望/Kirtar's Desire(OD) 2 虹色の断片/Prismatic Strands(JU) 1 ねじれの光/Ray of Distortion(OD) 2 真理の領域/Sphere of Truth(OD) 2 厳格な裁き人/Stern Judge(TO) |
Tomi Walamiesはじめとするチームが持ち込んだ白青《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》ウィニーもその一つです。この環境の白ウィニーの根幹たる《金切るときの声/Battle Screech(JU)》にアドバンテージの王道《物静かな思索/Quiet Speculation(JU)》、それによって導かれる《綿密な分析/Deep Analysis(TO)》を絡ませ、従来「青緑には勝てても所詮《もぎとり/Mutilate(TO)》一発」と言われてきた白系ウィニーに奥行きを与えた感があります。もちろん青緑に対する優位性は変わっておらず、デッキ選択として十分あり得る存在になったのではないでしょうか。ただ、デッキとしては強くても、個々のカードパワーに関しては今一つのデッキなので、引きがかみ合わないとその真価は発揮できないかもしれません。
| Zombie激動/Upheaval(OD) - Kazuhiko Mitsuya (OBC) / 2002 Worlds | |
|---|---|
| Main Deck | Sideboard |
4 霊気の噴出/AEther Burst(OD) 2 陰謀団式療法/Cabal Therapy(JU) 4 チェイナーの布告/Chainer's Edict(TO) 4 堂々巡り/Circular Logic(TO) 3 綿密な分析/Deep Analysis(TO) 3 被覆/Envelop(JU) 2 洞察のひらめき/Flash of Insight(JU) 4 無垢の血/Innocent Blood(OD) 4 行き詰まり/Standstill(OD) 3 激動/Upheaval(OD) 3 ゾンビの横行/Zombie Infestation(OD) 10 沼/Swamp 8 島/Island 4 ダークウォーターの地下墓地/Darkwater Catacombs(OD) 2 セファリッドの円形競技場/Cephalid Coliseum(OD) |
1 陰謀団式療法/Cabal Therapy(JU) 2 ひどい憔悴/Crippling Fatigue(TO) 1 被覆/Envelop(JU) 3 顔なしの解体者/Faceless Butcher(TO) 3 恐ろしい死/Ghastly Demise(OD) 2 怪奇な混種/Grotesque Hybrid(TO) 2 罪を与えるもの/Guiltfeeder(JU) 1 ラクァタスのチャンピオン/Laquatus's Champion(TO) |
一方で、青黒《激動/Upheaval(OD)》デッキは日本勢に使用者が多くいました。上に挙げたのは5-1の結果を残した本年度日本チャンピオン三津家氏のデッキですが、日本勢のなかでもチューニングが分かれていたようです。スタンダードで《激動》と言えば《サイカトグ/Psychatog(OD)》ですが、この環境ではその脆弱性ばかりが目立つ(黒コンには《布告》で除去され、青緑には《不可思議》で頭上を飛び越えられる)ため、フィニッシャーは《ゾンビの横行/Zombie Infestation(OD)》に絞られています。エンチャントメントを除去する手段に欠けるこの環境においては、《行き詰まり/Standstill(OD)》(このデッキには採用されていませんが)《強制/Compulsion(TO)》ともども、コントロールの主軸を張れる存在なのです。特に黒コンへの相性は圧倒的で、《精神ヘドロ/Mind Sludge(TO)》さえうっかり通してしまわない限り磐石とまで言えるでしょう。問題はますます加速する青緑への対応で、黒を濃くして《もぎとり/Mutilate(TO)》の投入なのか、はたまた無駄カードになるのを承知でメインから《恐ろしい死/Ghastly Demise(OD)》なのか、新たな方策を模索する必要はあるでしょう。
以上、世界選手権の結果からの雑感をまとめてみました。
私はこの週末、京都でPTQのジャッジをしていたのですが、相変わらず青緑と黒コンが多い中で、青黒激動や白青が上位に残っていたのが印象的でした。
結果として優勝したのはそれぞれ青緑と黒コンだったのですが、もはや、この二つのみで環境が構成されている時代は終わったと言えるのかもしれません。今まで強かったデッキだからと言って、デッキパワーにあぐらをかき研鑽を怠っていては、台頭する新戦力に打ち破られてしまうのです。
500名前後の参加者が予想されるGP札幌では、さらに激しい戦いが繰り広げられることでしょう。この夏の一大イベントを制するのはどのデッキなのか。そして、GP札幌優勝の栄冠を勝ち取るのは一体誰なのか。それを分けるのは、少しの工夫と磨かれたプレイングであることは間違いありません。
私自身も参戦します。それでは、参加者の皆さん、会場でお会いしましょう。
長文お読み頂き、ありがとうございました。ご意見・ご感想お待ちしております。