ウルザの眼鏡 出張版 第一回

九印

まえおき

ウルザの眼鏡 出張版は、マジック歴だけはそこそこあるが戦歴は無いレベル1ジャッジ、九印が送るカード分析コラム「ウルザの眼鏡」のWebバージョンです。

焦熱の火猫は電気球の夢を見るか?

焦熱の火猫/Blistering Firecat(ON)1RRR, 猫(Cat) 7/1, R
トランプル、速攻
 ターン終了時に、焦熱の火猫を生け贄に捧げる。
変異(RR)

スキジック/Skizzik(IN)に次ぐ、ボール・ライトニング/Ball Lightning(5E)の後継カード。《ボール・ライトニング》と比較すると、マナ・コストが(1)増え、パワーが1増え、そして変異能力が付加されている。

もちろん、《ボール・ライトニング》の後継であるからして、火力扱いで利用するのが基本的な使用法となる。対戦相手がクリーチャーを出していなければ、4マナ7点火力(!)だ。

これは点数で見たマナ・コストに等しい値のダメージが基本ラインになりがちな赤のダメージ呪文の中では強力な部類といえる。インスタントやソーサリーではなく、クリーチャーであるというデメリットもあるが、3回走れば人が死ぬパワーは凶悪この上ない。

この速攻持ちのパワフルなクリーチャーは、特に青と黒に対して大きな効果を発揮してくれる。

青は、クリーチャーを除去できない色だ。そして現在の黒はコントロールデッキぐらいしか見受けられず、インスタントの除去がほとんど採用されていない。これらのデッキはさらに、クリーチャーを並べることが少ない。

ということは、彼らは7/1速攻のこの火猫から身を守る術が無いということだ。

確かに青には霊気の噴出/AEther Burst(OD)のようなバウンスはある。だが、それがどうしたというのだ? 赤魔導師は次のターンも、この可愛くて凶暴なペットを場に出して高らかに攻撃を宣言するのみだ。

黒は無垢の血/Innocent Blood(OD)チェイナーの布告/Chainer's Edict(TO)を持っている。しかし、こちらはそれらを意に介さず攻撃することができる。何しろ、相手のソーサリーはこちらのターンにはプレイされないのだから。しかも、事が済んだ火猫は息絶えて自ら墓地へと帰っていくため、火猫を除去しようという相手の試みは徒労に終わる。

さらに《焦熱の火猫》にはオンスロートの新能力、変異が搭載されている。これはただの生きる火力である《ボール・ライトニング》に、新たな行動オプションを付け加えるものである。

単純に考えてみよう。対戦相手が放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer(7E)をコントロールしているときに、あなたは《焦熱の火猫》をプレイして、場に出して攻撃するだろうか?

いや、そんなことはするまい。これが《ボール・ライトニング》ならば、何か火力を引いて憎たらしいティムを墓地に送り込まない限り、手札に鎮座ましますこの電気球を使うことが出来ないだろう。

しかし、変異を持つ《焦熱の火猫》なら、2/2として場に出しておくことが可能だ。もちろん何かで除去される可能性もあるが、こちらが火力を引いて対戦相手が《放蕩魔術師》に別れを告げた後、(RR)だけですぐさま攻撃に転じることが出来るのは大きなメリットだろう。(1RRR)と(RR)では、他に行動できることが大きく違ってくるはずだ。

この、(3)を経由して(RR)だけで7/1という猫に変異できる現象は、《ボール・ライトニング》には無いもう一つのメリットを生み出す。つまり、必要とされる色マナの減少だ。

これは例えば赤緑ステロイドのような、赤主体ではないマナバランスのデッキに投入可能カードとして検討される可能性が出てくることを意味する。

赤緑パッチステロに激発/Violent Eruption(TO)パッチワーク・ノーム/Patchwork Gnomes(OD)と共に投入されているのはなぜか。それは赤緑にとって(1RRR)は許容できるマナ・コストではないが、(1RR)は許容範囲内であるということだ。

ならば同じく、変異コストに色マナを2つだけしか必要としない《焦熱の火猫》は投入を十分検討できるのではないか。

森/Forestカープルーザンの森/Karplusan Forest(7E)極楽鳥/Birds of Paradise(7E)をコントロールしているとしよう。

手札が《ボール・ライトニング》ならばそれはプレイできない。なぜなら赤マナが足りないからだ。

しかし《焦熱の火猫》なら、2/2クリーチャーとして場に出しておくことができる。そして次の自分のターン、無害と思われていたそのおちびちゃんは、いきなり口を大きく開けて目の前の敵に飛び掛るのだ。対戦相手の驚く顔が今から想像できるようではないか。

これは変異をもつクリーチャー全般にいえることだが、今の例のように、例え色事故を起こしたり、普通にプレイするにはマナが足りないような状況になっても、変異ならとりあえず3マナあれば2/2クリーチャーを出しておける。

マジックというゲームは、土地事故がゲームシステム上回避できない。しかし変異持ちのクリーチャーさえいれば、マナが足りなくてカードがプレイできないとか、色が合わなくてブロッカーすら出せないといったゲームにならないお寒い状況を減らすことができる。

そして変異のコストによっては、起死回生のクリーチャーが場に登場することも可能だ。

結論としては、《焦熱の火猫》はバーンデッキやビートダウンデッキが両手を上げて歓迎すべき、素晴らしいクリーチャーだと言える。

しかしオンスロートがトーナメント環境に入るにあたり、問題点も考えられる。

オンスロートでは大量の変異持ちクリーチャーが登場し、それらのほとんどは凶暴かつ凶悪なものばかりである。そして、マナ・コストに比べて変異のコストが低いものが多い。

ということは、2/2クリーチャーとして場に出てくる状態も多いと考えられるだろう。

そうすると、多くのプレイヤーは変異のコストが支払えないうちにさっさと除去してしまいたいと考えるに違いない。そして単なる2/2クリーチャーを除去するカードは大量に存在する。その中でも、ショック/Shock(7E)を始めとするインスタント火力は多くデッキに取り入れられるであろうカードたちだ。これが《焦熱の火猫》が抱える問題となる。

変異のコストさえ支払えれば、2点や3点の火力などものともしない脅威の生物たちは多く存在するだろう。しかし、しかしである。《焦熱の火猫》は正体を現しても、そのタフネスは1しかない。あっさりと火力でほふられる事になってしまう。火猫が火炎の呪文でやられてしまうとはなんという皮肉か。

また、黒もオンスロート後ではソーサリーの除去のみならず、インスタントの恐怖/Terror(6E)系呪文を取り入れてくるに違いない。自分のターンにほおっておいた2/2クリーチャーが、6/6クリーチャーになって襲い掛かってきました、では遅いからだ。これもまた《焦熱の火猫》にとってはマイナスと言える。

それでも、だ。

それでも、《焦熱の火猫》は頼りになる生きた火力としてデッキに入れるべきであろう。

《ボール・ライトニング》が活躍した時期には、《恐怖》があり、稲妻/Lightning Bolt(4E)があり、火葬/Incinerate(MI)があった。それでも赤魔道師たちは電気球を巧みに操り、対戦相手を焦がし尽くしたのである。

ならば現代の赤魔道師たちよ、《焦熱の火猫》を手に取るのだ。そして、その激しい炎の魔法で、対戦相手を消し炭にしてしまおうではないか。

あとがき

こんばんは、九印です。今回の分析は参考になったでしょうか?

実は一応戦歴はあります。札幌で行われたジャッジメント・プレリリーストーナメントで2位になりました。デッキに恵まれただけですけどね。

タイトルを見た人は気づいたかもしれません。第一回です。

そうです、今後も似たようなものを書いていこうと思っているわけですよ。このようなカード・スポットライト形式で。

私のようなもののコメントがどれだけ正しくて、どれだけの人に参考になるかは分かりませんが、今後も鋭意努力していく方針ですのでお付き合いください。

なお、ご意見ご感想ご批判はここの掲示板か、以下にて。

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それではまた、ドミナリアのどこかで。